ヘカッタラ シノッ(こどもたちのあそび)

作者のことば 千村マサル(ちむらまさる)

この絵本の発想のもとは、『アイヌ民族写真集・絵画集成』に載っていた伝統衣装を身にまっとった子どもたちの凛々(りり)しさです。最終ページで誇り高いアイヌ文化への敬意を表してみました。難しいテーマであり、資料不足の中、逡巡(しゅんじゅん)を振り払い気合いを入れて書きました。
最後にこの絵本作成にあたり、ご協力いただいたすべての人に感謝申し上げます。

解説

子どもたちは日々の暮らしのなかで、親の愛に見守られ、友だちと遊び、自然の中でいろいろな体験をすることで成長していきます。いつの時代にもその本質は変わらないことを本書は表現しています。
アイヌ語には日本語にない発音がいくつかあり、「小文字のカタカナ」で示しています。本書で使ったアイヌ語「ヘカッタラ シノッ」のヘカッタラは「子どもたち」、シノッは「遊び」という意味です。「キムンカムイ」のキムンは「山にいる」、カムイは「神さま」という意味でクマのことを指します。ヘカッタラの「ラ」は日本語の「ラ」よりも軽くあいまいな音です。シノッの「ッ」はつまる音で、「ノッ」の部分は「乗った」と言うつもりで「た」を言わないときの日本語の発音と同じになります。

【表紙】
3人が足を組んで引っ張り合う遊びを紹介しています。組んだ足がはずれたり転んだりしたら負けです。

【P1~2】
赤ちゃんは布にくるまれてシンタという揺り板に寝ています。乳幼児の死亡率が高かった時代、赤ちゃんの健やかな成長を願ってわざと汚い言い方で呼びました。かわいくてきれいなものに近づこうとする神さまは、臭くて汚いものが大嫌いだという世界観があり、「言葉の力」で病気を寄せつけまいとした愛情の表れだといえましょう。なまえは5、6歳になったころにその子の個性にちなんでつけていましたが、体の弱い子の場合わざわざ汚い名前をつけたといいます。

【P3~6】
つるわ遊びや、やり遊びは大人になってからの狩りの練習になります。

【P7~8】
模様かきは、衣服づくりや細工仕事の練習になります。子どもたちは日々の遊びのなかで大人になるための技術を身につけていきます。

【P13~14】
マスの遡上で季節が夏になったことを表しています。

【P15~16】
自然の恵みは人間だけのためにあるのではないことを、子どもたちは幼い頃から教わります。人間と神さま(注1)は対等でお互いに必要としあっているということを、神さまの観点で語る物語(注2)は、その世界観を次世代へ伝える役目をはたし、自然の側から世の中を見つめる目を育ててきたといえるでしょう。

(注1)病気の神様、動植物や火や水などの自然神や、舟などの人工物。
(注2)神謡(カムイユカラ、オイナ)と呼ばれるジャンルの物語。

【P17~22】
ずっと子どもたちと一緒にいたアイヌの犬、北海道犬の活躍を描いています。狩りの時には人間をサポートするなくてはならない存在でした。マスを食べにきたクマが子どもたちの方へ行かないように機転をきかせ、吠えて自分のほうへクマの気をひきつけています。子犬も一緒にクマにたちむかうことで、将来、猟犬としてりっぱに成長することを予感させました。

【P23~24】
お祭りの日に大人たちが踊った弓の舞を見た子どもたちが、大人になったらああいうふうに踊るんだという憧れをもって練習している姿を描きました。