カラスとカケスの物語
作者のことば 四宅智子(したくともこ)
「カラスとカケスの物語」のアイヌ語の原文は、私が小学生の時に亡くなったおばあちゃんが残してくれた語りの中の一つです。生前は歌や踊り、アイヌのお話などを語ることが大好きでした。ですから、今回はこのようにステキな絵を描いてくださった井上さんと田中さんに出会えて絵本が作れたことで、少しでもおばあちゃんの気持ちが子どもたちに伝われば、とても嬉しく思います。 子どもにとって、小さいうちからアイヌ文化や、まだ自然がいっぱいの北海道の文化に触れることは、大切なことだと考えます。子どもたちにはカケスのように、困っている人のために勇気と知恵をもってものごとをやり遂げるような、真に優しい人になってほしいと願っています。 この作品を選んでくださった方々、協力してくださった方々には、心から感謝しています。イヤイライケレ。
| 語り手紹介 四宅 ヤエ(旧姓相戸(あいと)) 1904(明治37)~1980(昭和55)年、北海道東部の町・白糠地方のアイヌ文化を幅広く伝承。晩年は阿寒湖畔で過ごされ、後進の指導や研究者等の聞き取り調査などに協力し、アイヌ文化の振興・保存に大きく貢献。 |
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解説
【P2※1】 「小文字のカタカナ」-アイヌ語独自の表記法について
アイヌ語には日本語にない発音がいくつかあります。それをコタンコロカムイの「ロ」、タプカラの「プ」や「ラ」のように、小さな文字で書き表すのが最近の慣例となっています。実際に発音する時は、「ロ」と「ラ」は日本語の「ロ」・「ラ」よりも軽くあいまいに、「プ」は日本語の「プ」を発音するつもりで口を閉じてから次の音に移ります。コタンコロカムイはコ・タン・コロ・カ・ムイのように5拍で、タプカラはタプ・カラのように2拍で発音すると良いでしょう。
【P6※2】 「食べものの神(ユカッテカムイ・チェパッテカムイ)」とは
ユカッテカムイ・チェパッテカムイを訳すと「獲物を授ける神・魚を授ける神」となります。神様の名前は地方によって異なりますが、各地の伝承に、鹿や鮭を袋の中からばらまいて人間(世界)に食料を与える役目の特別な神様が登場します。これは、かつてのアイヌ民族の世界観を反映しているのです。
【P7※3】 「タプカラ」とは
踏舞(とうぶ)といわれる男性の舞のことをいいます。手のひらを上へ向け両腕を広げて斜め前上にかざし、1歩1歩足を踏みしめて進んで行く勇壮(ゆうそう)な男性の姿と、鳥が羽を広げた姿が重なって連想されています。
【P26※4】 「ゆうべん」について
アイヌ民族の男子が備えるべき資質の一つに、雄弁(ゆうべん)さがあげられます。雄弁とは、説得力をもって力強く話すことで、詭弁(きべん)を弄(ろう)し(こじつけ)たり巧みにおしゃべりをすること(口達者(くちだっしゃ))とは区別されるものです。
本書のお話は、カケスの物まね上手なところから着想されたようです。
